看護の現場は常にインシデント・アクシデント(以下、イン・アクと略)が潜んでいる。どんなに徹底的に医療安全に取り組んでいる組織のなかにあっても、イン・アクは発生する。人は、間違う動物である。私の勤務する病院では、医療安全の加算で年2回の組織全体での研修会を筆頭に、医療安全リンクナースの研修、更には各部署での勉強会やイン・アク後の振り返りなどを実施し、医療安全強化に努めている。どこの組織も同じような取り組みであろうと思うのだが・・・。先日、体調を崩した私は、市内の200床あまりの比較的名前の知られた病院を受診した。診察時の医師はフルネームでの確認ではあったが、「○○ ○○さんですね。」と聞いてきた。その後、採血、CT、胃カメラと検査が進んだが、「安全のため、名前をフルネームで教えていただけますか。」と言われたのは一回も無かったことに驚いた。「この病院の安全管理の教育はどうなっているんだ? イン・アク多いんだろうなぁ。イン・アクの報告体制も浸透していないのではないかな。」などと不信感が湧いてきた。心配した検査結果は、異状なし。名前の確認ひとつではあったが、『この病院を受診することは二度と無いな』と感じた出来事だった。1999年、医療安全元年の事件で、患者、患者家族、携わった医療従事者がどれだけの苦しみを経験せざるを得なかったのかを、看護管理者・師長は、語り継がなければ医療安全の醸成には繋がらないのだ。1999年に、すでに看護師として働いていた私にとって、衝撃的なアクシデントであった。