ナーススケジューリング問題とは
次のような様々な事項の考慮しつつ、最適な勤務表を作り上げる問題です。
参考リンクhttp://research.nii.ac.jp/~uno/staffschedule_uno.html
http://www.orsj.or.jp/~archive/pdf/bul/Vol.41_08_436.pdf
http://en.wikipedia.org/wiki/Nurse_scheduling_problem
数理計画のシフトスケジューリング問題のうち、特に看護師の勤務配置の制約が、実務上、最も複雑で難しい問題であると考えられています。
従って、これを解くことができるならば、一般の勤務シフト配置問題(アルバイトや、パートタイマの配置)は、容易に解けると思います。
一例として、パズルを解く事も容易です。
スケジューリングは、制約の積み重ね
スケジューリングは、制約という積み木の積み重ねです。
積み重ねは、AND を意味します。積み木を追加して行くことは、制約のANDを積み重ねていくことです。
解集合=制約1 AND 制約2 AND 制約3 ....
3つのANDなら上図の青部分になります。
4つのANDなら上図のようになります。(5つ以上は、ベン図で書くのも困難になってきます。)
もしも、交わる点がない(空集合)とすると、、その時点で解はありません。
ほんの僅かでもよいので、交わる部分がなけれならない、ということです。
制約という積み木をどんどん積み上げて行くと、一つ一つの制約は難しくなくても、すべての制約を満たさないといけないので次第に難しくなっていきます。
途中で崩れてしまうと、解がありません。ですから注意深く矛盾が起きないように積み重ねて行かなければなりません。
特に制約の多い代表格が、看護師勤務表(ナーススケジューリング問題)です。
最後まで倒れずに積み重ねができたときだけ、解があります。何十もの制約(細かく見ると何十万という制約から成ります。)で拘束されるのが、ナーススケジューリング問題の特徴です。数学的には、NP困難な問題として知られています。
勤務作成者の役割
言い換えれば、看護の質とスタッフ・ナースの生活の質の両面を守ることです。全ての条件を満たす勤務表の作成は、難解なパズルを解くようなものです。
何が最適かは、その病棟の価値基準により異なります。コンピュータは、与えられた制約条件下で、与えられた価値基準での最適化したスケジュールを出力することは出来ますが、何が最適かをコンピュータに指示できるのは、勤務表作成者たる人間だけです。言い換えると、何が重要なのかをコンピュータに分かる言葉にして入力してやる必要があります。このことを、制約をプログラムする、と言います。
思いをルール化する
最も難しいのは、思いをルール化する部分だと思います。これまでの頭の中にあったルールをまず、箇条書きの言葉にします。その文章をコンピュータが分かる言葉に言い換える作業の部分が最も難しい部分です。
コンピュータの役割
コンピュータは、魔法のツールではなく、与えられた制約下でのありえる解を列挙することしか出来ません。解がないときは、「解がありません」と言います。ないところからあるものを作りだすことは出来ません。(スタッフが3人しかいないところに5人は作り出せません。)
開発者の願い
<勤務表ソフトは、勤務表作成者の為だけではない>
勤務表は、殆ど一人で作成され、紙を鉛筆でしたら、平均11時間程かかるようです。本ソフトウェアを使いこなせるようになると、最短で60秒、平均的には、1時間もかからない程度で済むようになるでしょう。時間にして10時間の節約になるかもしれません。今まで費やしていた時間を別な仕事に振り分けられるかもしれません。しかし、一人の10時間の節約よりも、全体スタッフの勤務や生活の質の向上の方がより重要な事だと開発者は考えます。なぜなら、良い勤務表・悪い勤務表があったとすると、その差はスタッフ数倍になって、その影響や効果が現れるからです。
<勤務表づくりのパラダイムシフト>
このソフトを使うと、人間には考えられないような綱渡り的配置が出来てしまう場面があると思います。
(ベンチマークでナース25 名の問題(Ikegami-3shift-DATA1)については,病院現場で作成された勤務表が39
のシフト制約と71 のナース制約を満たしてなかったことに対しスケジュールナースでは、1箇所に過ぎませんでした。)反面、陥りやすいワナもあります。たとえば、人員を特定の日に増員する例でお話しましょう。
注意して頂きたいのは、通常より人員を増やすというのは、普通はそれ相応のコストが伴うということです。具体的に言うと、ソフト制約エラーが増えたり、あるいは配置できない(解がない)エラーが出やすいということです。コンピュータ使ったところで、人の資源が増える訳ではありません。スタッフ数という資源は変っていないのですから、あちらを立てればこちらが立たず、いわゆるトレードオフの世界は変っていないのです。なにかを達成するためには、なにかを犠牲にしなければならない関係は、コンピュータを使っても変らないことに注意してください、一般には、勤務人数を増やせば、ソフトエラー(すなわち、個人の希望パターンを満たせない)が増えます。組織の目標を優先するか個人の生活を優先するかは、その時々の看護師長の判断によるでしょうから、どちらが良いという事は言えません。重要なのは、トレードオフということを意識して、一方しか見ないということがないようにすることです。スケジュールナースを使えば、その日は増員できるのかどうかということは、ほぼリアルタイムで分かります。同時にソフトエラーがどの程度かということも分かります。スケジュールナースを使えば、今までの紙と鉛筆の「やっと作った結果がそうなっている! だから誰にも文句は言わせない!」、という、出来ました。これしか出来ません..式から、対話的にトレードオフを判断する形態に、パラダイムシフトさせることが可能となります。具体的には、その日増員はできる、しかし、数人のスタッフに好ましくない夜勤パターンをしてもらはなくてはならない..ということを具体的数値として天秤にかけられるようになる、ということです。
繰り返しになりますが、組み合わせの最適化は、コンピュータが計算します。この部分の作業は不要になります。しかし、コンピュータは、指示に基づき計算するだけであって、本当の看護の質やナーススタッフの生活の質を考えて計算している訳ではありません。本ソフトは他のソフトとは違い厳密解を出力するので、明らかなスタッフ不足を指摘、上に訴求するツールにもなり得ますが、コンピュータや、ソフトウェアは、道具にすぎません。よりインシデントが発生しにくいスタッフの組み合わせや配置等、看護師長には、単純に数値では現せない極めて人間的な仕事があるはずです。
道具を使えるところは、道具を上手に使い、空いた時間を、本当の看護の質や、スタッフナースの生活環境の改善に割いていただけたら、と思います。
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